CCS
外伝逆襲の藤隆平賀百合子の考古学教室
第
8話。「そうだ、横浜へ行こう」そして、ハネムーンに向かう前の日、さくらは有る事を考えていた。行く先はタヒチでである。飛行機の座席から、自分の親友である原当麻の事を考えていた。
「何か考え事でも有るのかい…。」
夫は妻をなだめようとしたが、駄目である。彼女の事が頭にこびりついて離れないと言う事である。おみは、きっと他人の迷惑を考えずに先生の自宅までに押しかける人間だなって考えていたのである。
「さくら、優雅なタヒチの休日を楽しもうではないか。」
夫はそういう。
「そうするわ。」
さくらは夫の方向を見た。
飛行機はそう言って飛び立っていった。
そして、話は変るが、小狼君と苺鈴のことである。彼女は友人のマンションに招かれて、そのまま一泊してしまったのであるが、その時の興奮が忘れなれないのが小狼君であった。
「小狼、どうしたの
?」苺鈴が聞いた。
「ああ。そういえばお前の友人ってあの
FM-puri puri の鈴原みさきちさんだったんだな。吃驚だよ。実物で見るのと写真で見るのは大違いだな。」
小狼は有名人に有った事をドキドキしていたのである。
「そ。今度の新曲はみさきちの番組で流すんだよ。で、おおっぴらに香港出身の大学生と付き合っているってのも明らかにするしね。」
苺鈴はそう目配せをした。彼女のやる事は積極的すぎるのはたまに傷であるが、こういったのは悪くはない。あのさくらよりは苺鈴の方がずっと俺的に楽だと思っている。
と言う事で、
「あ、みさきちさん単身赴任で関東に住んでいるんだってな。」
と苺鈴に聞いた。
「うん。数年前に新潟出身の御主人と結婚して今は御主人はぷりぷり市に住んでいるんだって。御主人真面目で空手の有段者なんだってさ。」
小狼が聞いても居ない事まで苺鈴は話した。
小狼はそのまま聞き流すように聞いていた。
「苺鈴、学校は何処に通っているんだ
?」と一言聞いた。
「今は私は横浜のミッション系の高校に通っているよ。小狼は
?」彼はこう答えた。
「俺は昔付き合っていたさくらと同じ大学に通っていた。」
苺鈴は地下鉄の事を思い出した。
「じゃあ、あの電車の中でであった女の人
?あの人可愛いよね。」小狼は
「あの人はさくらじゃなくて知世と言う人で、違う学校に通っていた人なんだよね。」
と説明した。
「ふーん。あの人は昔あこがれていた小学校の時の先生にそっくりだった。ショートカットで、品とかよさそうだなって。ヴィジュアル的に小狼とお似合いかもしれなかったと思うよ。」
と無邪気な顔を苺鈴はした。
小狼は
「彼女は、今現在小学校の先生のなる勉強をしているんだよ。彼女には今現在彼が居るんだ。」
とそっけない顔をした。
「フーん居るんだ。彼氏くんが」
と剣呑そうに気の抜けた炭酸飲料のような声を出した。
「今は、俺自身さくらを忘れて良かったなって思っている。」
窓から見える風景を眺めながら妙に晴れやかな顔をした。
「小狼。絶対台湾に来て、お母さんに結婚を報告するんだよ」
と苺鈴は彼氏くんに念を押した。
そして、数日後。横浜のあるフィットネスクラブ…。
現在知世と彼女の恋人の朝岡蓮次が会員になっているそこで彼女は機械で汗を流している。
「蓮次君以外とやるのね。見直しちゃった」
ひょろひょろと背が高いだけで全然たいした事の無い彼が良くここまでやるのは私が居るからであろうか。或いは彼が成長したのか。どっちにしたって自分としては彼がかっこいい所を見せてくれるのは嬉しい。それに対して苦しそうでもないのは、中学生の頃と比べて、成長ぶりである。大学も知世と違うところに通っているのであるが、彼女が家庭教師を買って出たのが良かったのかもしれない。現在も知世は家庭教師のアルバイトをやっているのである。蓮次は知世にとって自分の考える事を変えた人である。
多分、さくらにかかりっきりであれば自分自身が駄目になると、蓮次と付き合い始めて
思った事である。蓮次がお世辞でも誉めてくれる事によって自分を評価して欲しいと言う心が芽生えてきた事も有るのだ。
「知世もやってみない。」
さっきまでやっていたマシンを知世に変る。
知世も互角であるが、蓮次ほどではない様である
この、蓮次君は知世にとって福の神かもしれないし或いは…・。
似合いのカップルである事は確かである。蓮次君も知世に出会って知世の言う事を守って大人になったのだから。あの知世の慈愛に助けられた男性である事は想像に難くない。
さて、そんな二人が汗を流している時に、ある人影がを発見したのである。
ん。小狼は何処となく分かった。それと連れの女性である髪の長いかわいらしい女性である。綺麗な人と言うよりは可愛らしいと言う表現がぴったりの気の強そうな女性である。
「やあ。知世に蓮次君。」
小狼は二人に声を掛けた。知世は女性の方に目が行った。
「あの子この前電車であった子じゃないの。あの李苺鈴でしょ」
と彼女は女性を確認した。
「そうだよ。李苺鈴だ。苺鈴、俺の友人の知世と朝岡蓮次君だ」
と女性に紹介した。
「始めまして。おふたりさん。んあんた小狼と電車の中で話していたのを見たよ。李苺鈴です。」
「はじめまして苺鈴ちゃん。あんたのことも電車の中で見たよ。」
とストレートロングの女性とショートカットの女性は御互い声を掛けた。
蓮次は苺鈴の事を見て…。
「君って確か臺灣出身のジャリタレで何年か前に
CDを出していたよね。確か俺が中学か高校の頃じゃなかったかな…。」とその長髪の女性を見た。
「私は、そうね。そのぐらいになるかな。ミニスカートのチャイナドレスで歌っていたんだけれども、飽きられた上に毋が病気で倒れて郷里で毋の手伝いをしていたの。
でも、
FM-puri puri の小須田さんという人に誘われて日本でまたデビューする事になったの。今度は大人の女性に受ける歌手って感じかな」って話した。
「ふーん。私最近のあなたの歌気に入っているわ。良くラジオでかかるよね。
FM-友枝でもかかっているのを聞いた事が有るわ。」知世はそう話した。
こう見ているとずいぶん苺鈴もお姉さんになったなって改めて思うのである。
「ねえ。知世あなたって小学校の先生目指しているんだって。小学校時代の
憧れの先生にそっくりだったんだもん。そんな感じね」
と苺鈴が言った。
「うん。そういう風に思えるなんて…。私もその彼女みたいになれると思うんだ」
知世はそう断言した。
「おまえも、そっちの方が幸せだと思っている…。」
小狼はそう言った。
「ねえ。皆さんプール行きませんか。」
蓮次がそう誘った。
知世が
「いいわよ。蓮次君の気に入りそうなおニューの水着を買っちゃったよ」
と嬉しそうに言った。
「見てみたいね。」
蓮次はそう返したのである。
さて、プールである。
知世は水色に濃い青のチェックの入ったハイレグ競泳水着を着ていた。
「良く似合うね」
なんだか蓮次は嬉しそうであった。
苺鈴が遅れて入ってきた。
自慢のストレートロングの髪に赤一色のハイレグ水着が鮮やかだった。
水に入るとそれは、中国の神話に出てくる水の精をほうふつとさせた。
男子二人も知世もそれには美しさを感じていた…。
4
人は楽しく過ごしたと言う…・。さて、地下鉄吉野町駅から一人の女性が初冬の町をある家まで向かっていた。
さくらの親友である原当麻おみその人である。
原当麻の目的はただ一つ。
平賀先生に会うためにここに来たのである。
友枝町から足掛け
2時間を掛けてこの地に降り立った彼女は足取りが軽かった。駅を通り過ぎ運河沿いに古い家並みが広がる町を通り過ぎて、さっそうと走るそれは
怪物を打倒しようとする女戦士と言ったところであった。
もう築数十年と言った感じの引き戸を原当麻は開けた。
「御免下さい。」
大きな声に驚いたのは、ここの家に住んでいるキートンであった。
「お客さんか
?見慣れない顔だな…・ん?」キートンはそれが自分の娘の研究室に来ていた女子学生である事を確認した。
「平賀百合子の父親です。今現在百合子は風邪で寝込んでいまして、下の娘は学校から帰っておりません。したがって私が丁度研究日なので
私が看病しています。」
ともうしわけなさそうに答えたのである。
原当麻は、
「ああ、そうですかそういえばお父様はあの東京灣岸の
Clamp学園に勤務していらっしゃるようですね。先生と同じく考古学で・・。」といった。
「私も考古学をやる人間として論文を出しているのですが、日本では全然認めてもらって
居ませんでしてね。不遇の時代をあなたの学校の木之本藤隆氏に援助してもらった事が
沢山有るんです。私の論文は欧米では評価されているんですよ。あの贋作作家として名高い藤田玲二氏も私を評価していますよ。あの人も研究者として優秀なのに何処で如何間違ったか…・。」
原当麻は
「そういえば、思い出しましたが、アメリカのドキュメンタリー作家のブランドン
=ウォルシュ氏が、スコットランドに行った時の珍道中を本にしていましたね…。あのタイチ
=ヒラガ=キートン氏ってお父様の事では…・。」と素っ頓狂な声を出した。
「ええ。あの私ですよ」
とキートンは苦笑した。
原当麻は茶の間に案内されてコーヒーを所望された。そこには青年と幼児がそこにいた。
「こんにちは〜。」
彼女は幼児に挨拶をした。原当麻は幼児が平賀百合子に似ている事を確認したのである。
「私の孫です、そしてここに居るのは百合子の夫でこの子の父親です。ベトナム人で英語しか話せないのですが。幸い家の物が英語を話せるので意志の疎通は英語で行っています。」
原当麻は国際的な家族だことと考えるしかなかった。
それと百合子の性格は男の子の母親である事を確認したのである。勢いだけが凄くて
空回りする事が多い…・。
百合子の夫であるティエンは、百合子の寝床の方に行ったのであるが…。
「御主人も気になるようですね…。」
彼女はティエンが行った方向に行った。
見回すとそこには犬や猫ばかりが居る事に原当麻は気がついた。
「何なんですか。この動物の群れは
?!」キートンは
「これは、私の父、つまりは百合子の祖父が動物学者で飼い始めて、こんなになってしまったんですよ。」
といった。彼自身それに気にならないのかもしれないのである。
“ばふばふばふばふ〜ん”
とんでもない犬がやってきた…。
「こいつ一体何なんですか
?」原当麻は吃驚した。
「この犬は太助といいまして、セントバーナードとチャウチャウの雑種なんですよ。
こいつは並みの犬より
300万倍の嗅覚を持っているんですよ。」原当麻は辺りを見回して、
そう言えば百合子の祖父が居ない事を確認していた。
「あのおぢいさまはどうしました。」
キートンは口篭もって…。
「いや、あの人は女遊びでしょう…。」
剣呑そうな表情をしてコーヒーを飲んだ。
古代ドナウ文明と書かれた本を見つけたのが原当麻だった。
「古代ドナウ文明ですか…。」
痕跡は見つかったんですか
?といおうとした時に…・。
「ルーマニアのある場所を掘ったのですが、住居跡を発見したぐらいです…。」
見つけたのはいいけれども少々残念がっていた。
「
Clamp学園であれば資金を出してくれるんですよね。」と原当麻はそう聞いた。
「うん。今度発掘隊を組織してくれる事になってね」
キートンは希望を持ってそう言った。
「本格的な全貌は分かると私は期待しています。」
原当麻は自分の事のようにわくわくした。
それとケーキを持って来て…。
「先生のお見舞いに持ってきました。是非御家族の方と一緒に食べて下さい。」
と見せた。
「ふーん。アッぺルシュトールデルですか。みんな喜ぶと思います…。」
とキートンは顔がほころんだ。
原当麻は思い出したように、
「あの先生によろしくお願いします。」
と一礼して帰っていった。
そして夕方になって知世が帰ってきた。
“
I’m home.”どうも兄が居ると英語になってしまうのであった…・。
キートンが知世に、
「そう言えば、原当麻さんがここに来ていたぞ。」
と告げた。
「一体何の用で…。」
彼女自身面食らっていた。いきなり来るもんではないと思っていたからである。
知世は帰って来てから早々に夕食と作ろうと思ったのであるが…。
「今日は俺が作ったからいいよ。」
とティエンが既に色々作っておいたのであった。
「ありがとう。姉ちゃんは兄ちゃんの料理だったら食べるんだよね。」
と独り言っぽくぶつぶつ言った。
「まあ、君の料理だって美味しいんだけどね…。」
すかさずフォローを入れたティエンであったが…。
窓の外からは実の無くなった柿の木が月に照らされていた…・。
「今日もおじいちゃんは外泊か…。」
知世はまた自分の祖父の事を呆れ返っていたのである。
病み上がりの姉が
「相変わらずよ…。」
って柿の木の方向を見た…・。
「でも、原当麻さんてお姉ちゃんの事を考えている數少ない理解者だよ…。」
とそう考えていた。
「君も只不満のある物に噛み付くだけではなくて、慎重に物事を見る事だね…。」
ティエンはそう言った。
そういえば相川美幸は自分の事をお嬢さんの道楽だといっていたな…。
「美幸さんにそう言われない様にしなきゃね。」
知世はそう言った…。
そして、また百合子の研究室で…。
「あの、原当麻さん…。」
百合子は押しかけてきた弟子にそう言った。
「何でしょう。平賀先生」
彼女は顔を見合わせた。
「そういえば私親友のさくらの事が気になってメールをこう入れたんですよ。
『元気か。あなたのむすっとした顔が目に浮かびます。軽はずみに結婚したから、御主人とうまく行っていないんではないかなって。嫌なら自分が地獄を見るよ』書いたんですが…。」
と説明した。
百合子は、
「そんなのあんまりじゃないの。」
といつものように激怒した。
原当麻は
「あの子が私は心配になって言ったんですよ。そんなに簡単に結婚してうまく行かないのは目に浮かびますよ。」
といった。それに対して、百合子は怒りながら押し黙っていた。
その事を珍しく知世に話したのである。
「姉ちゃん。そんなの親友だからそのぐらい毒のある事は言うよ。私だって親友の有村に
そのぐらい毒のある事はしょっちゅう言われるの。そこから言い合って友情が芽生えるんだよ。原当麻さんの言う事間違っていない。ねえちゃん本当にわがままだ…。」
知世は溜め息を吐いた。
「私の言う事は耳に痛いけれども、原当麻さんに言われて、姉ちゃんも反省したんじゃないの。」
と本当は心配している姉を見た…。
百合子は父や祖父の心配はしてきたが自分の心配をしてくれる人が居なかったのに
気がつかなかった。
知世がそう言っているのをイギリスに居る時に思うのである…・。
日本に居るとどうも嫌なんだよな。
「人間って不思議だね…。」
そうキートンが二人を見た。
「最初
Londonで君たち二人を見ていたら、仲のいい姉妹のようでくっつくと喧嘩ばかりするんじゃないかなって思っていたんだ
やはりそうなんだよ。」
キートンが観察していた報告を女性二人に述べた
「百合子が知世の気に要りそうな物を良く送ってくれるのは、色々心配しているからじゃないのかな。タータンチェックのミニスカートやティディベアなんか…。」
またもキートンがそう言った
「人間はずっと仲良くは出来ないもんなのかもね…。百合子がいまだによそから来た子に抵抗感が有るのかもしれないけれども。」
キートンの話はまだ続いている
女性
2人はしゅんとなって聞いているのであるいつもやさしい父親がこういう事を言うのが結構堪えたのかもしれない。
ティエンは黙ってお茶を飲んでいた。
「それとだ…。二人に言っておく。百合子は…。もうちょっと人が心配しているのを聞く事。少しの事で怒らない事だ…。妹が心配しているんだから…。
知世は…。お姉ちゃんを厳しく叱らない…。心配しているのは分かるかもしれないが…。
今日は少々お父さんは怒り過ぎたかな…。」
キートンは二人の娘を見た
「分からない…。でも出来るのかな私は少しでも家族に溶け込みたかったから有益になるかなって思っていっていたのよ。」
と知世は言った。
百合子は、
「私は、どうも世の中道理が行かないと思っているから色々噛み付いてきたけれども…。」
といった。
「君も不遇だと思っているのならば、少しでも改善すれば私のように風が吹いてくるかもしれないよ…。」
と微笑んだ…。
ティエンが、
「なんだか、最近のお父さんは落ち着きが出てきましたね。」
といった。
「私思ったんだけれども、知世を引き取ってからのお父さん、人間的に成長したって今更ながら思うよ。」
と百合子が行った。
知世も、
「
Clamp学園の理事長さんもそれを知っていたのかもしれないのね。」といった。
「いものやまのこるくんか…。彼自身私の本やユーリー・スコット教授の本のファンだといっていたよ。」
とキートンは思い出していたのである。
そのまま初冬の夜は更けていった。
所変って、ここは
Clamp学園の大学部である…。キートンが教鞭を執っている学校である…。
ここの学部長が、
「キートン君、今度君の主張するドナウ文明の発掘をルーマニアでもっと大規模に行う事になったよ。もちろんいものやま財閥がバックアップしてだね…。」
キートンは
「えっ本当ですか。」
と大喜びをした
その時にキートンは…。
(
百合子もこういう事が有るのではないかな)と考えていたのである
キートンはそのまま百合子の研究室に電話を掛けた。
“もしもし百合子か
?私は今度ドナウ文明の発掘が本決まりで決まったよ。まったくラッキーも有る物だなって今更ながら思うよ…。”「本当、お父さん。今度私もこの講義又もう一年延長する事になったよ。」
と大喜びで父親に話した。
親子二人でラッキーが転がり込んできたのである…・。
これには原当麻さんが
「私も弟子としてついていきます。」
と意気込んでいたのであるが…。
つづく