CCS
外伝逆襲の藤隆平賀百合子の考古学教室
7「知世の真相」
さて、話は少々さかのぼって、百合子の研究室に来ていた知世とキートンであったが、
キートンがとんでもない物を知世に見せたのである。
今現在は百合子自身藤隆に用が合って、席を外しているのである。
「なあに。パパ
?」知世は少々不思議がったのである。何も変哲の無い
MOを見せられたりしたって何でもない感動もない。一体父親は何が言いたいのか分からなかったのである。
「ああ、これ
MOドライブついているんだ…・。」パソコンのスイッチを入れてい中身を確認してみる。
ぶーんという音と共に一覧表のような物が出てきたのである。そこに書かれていた物は顔写真と共に
番号で呼ばれていた人間であった…・。
「ねぇ。これ…。」
知世は絶句した。多分、あれではないかと踏んでいたからである。一覧表を読み勧めて行けばいくほど、あれだと洞察力の強い彼女は思った。
「
exam system の実験に使われたクローン人間の一覧表ね。だとしたら私もここの中に存在している可能性が大と言う事ね。」あった。番号と共に、ナンバリングがされている。番号はどんな物かは忘れてしまったが…。
顔写真の自分は大体
10歳前後と言ったところだろうか…・。「
”私”ね…・。製造年月日が19XX年のX月 X日と言うところね…。私の戸籍上の誕生日は19XX年の09月03日なのよね…・。私の記憶は人為的に埋め込まれた記憶なんだよね。登録されている記録と戸籍の記録が数年食い違っているよ。」
キートンは淡々と答えた。
「実はこの
MO自身私が、大道寺家の諜報部から私が貰った物なのだよ。」「何でこんな物を…。普通廃棄されるか部外者には見られない物だと思っているんだけれどもね。
まさかボディーガード権限を利用して手に入れたんじゃ…。」
知世はそれを見てあきれてしまった。
exam system
事体、コングロマリットとして知られる大道寺家の軍事研究の一貫として勧められていた物である。クローン人間を利用して強化人間を作成する計画が存在している。後年旧日本列島の北部に成立した北陸連邦の諜報部がその全貌を明らかにしたが、今現在前面公開されていない。そのクローン人間の一人が知世と言う事である…・。
「私も、大道寺家の闇の部分は保険調査をしていた時代の癖で、興味を持ってしまったんだ。
これはとんでもない事だと思ってね。」
キートンは真顔になってしまった。
「でも、こんな物をお姉ちゃんの研究室に持ち込む物じゃないんじゃないの。私の家族を考えても、
おじいちゃんはクローン人間に懐疑的だし、お姉ちゃんは陰謀のような物にパパが首を突っ込むのを
嫌がっていたじゃないの。こういう物をみて喜ぶ人間だったら…・。パパの軍時代の知合いとか、
或いは同業者のダニエルさん、あるいは商売敵のチャーリー当りが捜査物件だと思って嬉しがるだけ
私が預かっておくね…・。」
知世はその
MOを自分のバッグに入れた…・。その後、数百年の時を経て、
exam systemの研究書が無傷に近い感じで発見されて『かぐやロボット』という少女の形をしたクローンペットが作られたと言う事である。「ああ、さっきの事は忘れよう…。」
キートンは話を変えた。
「そういえば、大道寺家って軍事メーカーとして、南アとイスラエルの軍需メーカーに一部部門を売る前から、兵器見本市に顔を出していたな…・。」
知世は、
「そうそう。大道寺のカラー液晶は性能がいいって、評判だったわ。一般的に液晶ディスプレーは、
消費電力は
CRT(ブラウン管)の3分の1であって、軍用機や車両搭載の電子システムでは必要不可欠なわけよ。」と答えた。
「なるほど。そういえば、
daidouziとかかれたブースを私は見た事があるな。」とキートンも答えた。
「私も、パパと顔が合っていたかも…。」
知世も顔を見合わせた。
知世は自分で考えると父は心の中に姉の分身を求めているのではないだろうかと言う事である。
姉が早く結婚し過ぎたために、彼女の分身を求めていたのではと考えるのである。
父自身私に自分の話を理解してくれるのであろうなと思って、考古学の話を日本に来た時にとうとうと
語ったのである。無言状態の父を見てそう思った。
さて、数分後藤隆に用の有った百合子がみずからの研究室に藤隆と帰ってきたのである。
「お父さん、少し藤隆さんに参考になる書籍を借りに行っていたのだけれども、そういえば藤隆さんとこのお嬢さんは、学部長さんのお孫さんとお見合いする様ね。」
百合子は祝福するように答えた。そいつの名前はサクラだって…。知世は言おうとしたが、押し黙った。彼女の頭にはとーやの事が頭にこびりついているのではないだろうか。
「そういえば藤隆さんづてに聞いた話なんですけれども、学部長のお孫さんてあなたを欲しがった
らしいの。」
と知世の目を見た。
「私は、そういうの辞退するわ…。」
百合子に言い返した。
「私も自分の娘だって気立てがいい娘ですので可愛がって下さいっていったんです。」
藤隆はしょうがなく言った。
その後、料亭で知世は、その学部長の孫の話を聞く事になるのである。知世は
「結婚の条件として…・。」
と藤隆に質問した。
「ええ。家庭に入る事だそうです。知世さんは結婚後も働くつもりなんですよね。」
と笑って彼女の方向を見た。
「私は、その方向なんで、専業主婦より小学校の先生を続ける方が私は面白いと思うんです。家の人が、学者ファミリーなので専業主婦なんてできないですよ。」
と父親と姉を見た。
「そうね。」
と百合子は知世を見た。
すると電話である…・。百合子が出た。
「
Hello.」家に残っているベトナム人の義兄だろう…・。
「分かったわ…。今夜のおかずはあなたが作るのね…。」
携帯にでた百合子は英語でそう答えた。
「ティエンはイギリスで職が見つかったようで、今回は休暇で日本に来たって言っているよ。」
キートンは藤隆にそう答えた。
「多分、甥と一緒ですわ。」
知世がそう答えた。
「お母さんが、職が無いのも可笑しいよね。」
藤隆がそう言った。
百合子が苦笑したのをみんなで笑った。
「確かにね。私もこれで安定した職場につけるかしら…。」
そう彼女は言った。
「あと、押し掛け弟子の原当麻さんもお姉ちゃんの力になるよ。」
知世はそう言った。
「あの人もさくらの結婚を祝福していましたからね。」
そう述べたのである…・。
「小学校の頃とは違うわね…・。」
百合子の研究室から見える古くなった楡の木を知世は見ていた。
知世の研究室の机の上にあるラジカセがなった。
“FM-Puri puri ,
鈴原みさきちのangelic wings, お相手は天使の羽根でみんなをいざなう鈴原みさきちです。最近、日本列島が煩いですが、そんな事を忘れて、今から2時間音楽の世界にいざないます。今からおかけする曲は、李苺鈴の「しあわせになりたい。」見事にイメチェンを研げたアジアの歌姫李苺鈴。数年前にミニのチャイナドレスでデビューした時の面影は全然有りません。今はカットソーに
ジーンズでギターの弾き語りが多い大人の女です。今は女の子ファンが多いんですよ。等身大の
女の子の思いを歌ったのがヒットなのでしょう。今日お届けするのは
new albumの「私の好きな人」に収録されている曲です。切ない北京語のラブソングで今付き合っている男の子
に向けた曲です…・。では…・。
”研究室に哀愁の漂うラブソングが漂った…・。
「今私、この歌手好きなんだよね。今紹介されたアルバム買っちゃったよ。」
百合子が言った。
「この人昔ジャリタレとしてデビューしたんだよ。知らなかったの」
知世はそう補足した。
百合子は、
「知らなかったの。アルバムの雰囲気から買っちゃったのよ。切ない雰囲気のルックスが私好き・・。」
普段は大人っぽい百合子が乙女の顔を見せた。姉貴は純情と言うか、根が乙女チックなんだよな…。
知世はそう苦笑したのである。
「さて、この今歌を歌っていた苺鈴ちゃんのお付き合いしている人間は、香港出身で行く行くは結婚するらしいですよ。」
DJ
はしゃあしゃあと言ってのけた。「お姉ちゃん、私この苺鈴と言う女の子の付き合っている男の子知っているのよ。小学校時代にさくらの事が好きで付き合っていたのよ。」
知世はそう言った。
「小狼君の事ですね。」
藤隆はそう言った。
「うん。これでいいのですよ。」
と人事のように…・・。
「藤隆さんだってやはり昇進の方が重要なんですね。」
百合子がそう言った。
「ねえちゃん。そんなんじゃないよ短絡的に言い切れるもんじゃないよ。さくらだって学部長さんのお孫さんを気に入っているみたいだよ。」
知世はそう言った。
「あの、百合子さん。私だって小狼君とさくらさんが結婚するのが望ましいと思っていました。でもあの
2人だって倦怠期になっていたところに、お見合い話が転がり込んできたのですよ。さくらさんも乗り気でして、彼女が好みのタイプだったみたいですしね。」百合子は炭酸の抜けたコーラかなにかのような声で…。
「そうなんですか。」
「おねえちゃんが期待していたストーリーじゃなくて良かったんじゃない。」
知世は皮肉を言った。
「百合子さんは、短絡的ですね。」
藤隆も同感と言う顔をした…。
「まあ、おめでたいですよ。」
キートンが気を取り直すように行った。
「ええ。そうですね」
藤隆がそう言った。
「そういう事ね。」
百合子もそう言った。
そして一ヶ月後、さくらはお見合い相手の男性と華燭の典を上げた。
純白のウェディングドレスを着た彼女は、怒っているそぶりもなく、笑っているそぶりでもなくただ人形のように押し黙っていた。この結婚式自体政略結婚である事が見え見えで藤隆と同じ学部の百合子も呼ばれていたのである。彼女はこんな理不尽な結婚って当日になってまでヒステリーを起こしていた。
それに呼応したスコットランドから帰って来ていた美幸は俺も行った方がいいんじゃないかなって行ってはいたのであるが、知世が自分一人で大丈夫だといって連れて行かなかったのである。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん自身がわがままお嬢さんなんだよ。」
知世は姉にそう言った。
「でも許せない物は許せないよ。」
百合子は悔しさに拳を固めていた。
「昔付き合っていた小狼にも言ったけれども彼だってもう彼女には飽きたって言っていたの。さくらだってお見合いに了解していたからね。」
となだめた。どっちが姉なんだろうか知世自身この人を心配していなければこんな事は言わないだろうと思ったのである。
さくらが控え室から出て来て、
「あの知世のお姉ちゃんに話があるんだけれども。」
と知世に会釈した。
控え室に呼ばれた百合子は…・。
「あの百合子さんでしたっけ。あなたを父の部下として言いますよ。私も信じたくはなかったのですが、小狼も私と別れる事はもう随分前から決まっていたのです。私もあのお見合い相手のルックスも
性格も気に入っているのです。出なければお見合いはしませんよ。大学も余り好きではなかったし、
大学を辞められるのであれば、私結婚しようと思ったんです。父と学部長さんの方で色々有ったかもしれませんが、私自身が決めた事です。」
さくらはそうきっぱりと言った。百合子はそのままへなへなと座り込んだ。
「分かりましたか。百合子さん」
藤隆が、横からそう言った。
「あの今日はとーや君来ていないんですか
?」百合子は藤隆に質問した。
「多分、遅れてくると思いますよ。」
藤隆が苦笑してそう言った。
「困ったお兄さんですね。しかし彼が一番嬉しいんじゃないでしょうか。小狼の事を余り許していなかったので…・。」
と窓の外をまた藤隆は見た。
案の定遅れてとーやは妻である美幸を伴ってやってきたのである。
その時のとーやは何も表情を崩さなかったと知世の日記帳に書かれているのである…。
そして、
「まったく。実におぞましい結婚式だった」
百合子は怒って東京の繁華街に消えて行った。
その時に、原当麻が現れた
「平賀先生ですよね。多分ここに来ると思ってやってきたんですよ。」
百合子は彼女の顔を見て
「そうあんたしか私の理解者は居ないよ。妹は私に色々煩いし、主人はあの体たらくだし、父親もぢーさんも頼りにならないし…・。むかつく」
と管を巻いたのであった。
「先生、それ分かりますよ。でも妹さん本当は心配しているんじゃないかと思います。
先生、イギリスと日本を往復する時に妹さんが先生の好きな物を用意してくれるらしいじゃないですか。先生の帰りを心待ちにしている気持も有るから煩いんだと思います。妹さん養子らしいですよね。」
百合子は黙って頷いた。
「私の予測だと昔居た家で不幸な事が有って家族の一員だと先生に認めてもらいたいんですよ
先生は信じられない物にはすぐ食って掛かりますがそこが弱点じゃないでしょうか。
私に妹さんが性についてはなすのが許せないと言いますが、私だって興味が有りますから…・。」
原当麻の話はとうとうと続いた…・。
「わかったわ。原当麻さん」
百合子は分かったようである。
「あと先生は、男の子を見んな不潔な存在だと思っているみたいですね。私は大分の公立校出身で、
男性とも机をならべていたから分かるんですよ。男のそういう部分を見ても可愛い物だな
男の子ってこんな感じだなって。先生はお嬢様女子校にずっと居たから純粋培養なのかな・」
原当麻は皮肉を言った…。
百合子は痛いところをつかれてしまった。
「純粋培養のまま大学で男子と机をならべて失敗しているような人じゃないかなって…・・。
私女ばかりだと気が滅入るな…・。しきたりや変な仲間意識が有って」
原当麻はそう言った。
「先生のまっすぐなところは男子にも受けたと思いますよ。共学校に通っていれば絶対ヒロインになれたと思います。多分生徒会長とかピッタリかもしれないですよ。思春期に男子とディベートしていたら面白いと思っただろうし、文化祭や体育祭も男子と一緒だったら…。」
彼女は取り止めの無い事をずっと言った。
百合子は…。
「祖父や毋の方針で女子校に入っていたのよ…・。原当麻さんがうらやましい…。」
原当麻は
「先生が悔い改めればいい事は転がり込んできますよ…・・。」
喧騒と焼き鳥の煙が棚引く居酒屋でそれは快く響いた…・。
近くでは酔っ払いが倒れ込んで店員に担がれていたのである
百合子と原当麻は顔が赤くなっていたのである。
つづく