CCS
外伝逆襲の藤隆平賀百合子の考古学教室
6「小狼君との回想」
さくらとのお見合いから数週間後、知世はアルバイト先のMM21に向かっていた。
小狼が、新しい女性と恋に落ちていた事を、私は何も言わないわ。と知世と思っていたので、
バイト先のパン屋に真っ直ぐ向かっていた。…・。
…・。そして数時間後、知世はある人とであった。小狼である。ここの地域のインフォメーションセンターで時計を気にしながら待っていたようである。
もうすっかり宵闇に包まれて当たりは真っ暗である。それに比して、ネオンサインは実に明るく光っていた。知世は、その侭自分の家の最寄りの駅まで急いでいた。
「22:30か。急がないと遅れちゃうわ…・。」
知世は独り言を言った。
地下鉄の駅まで急ぐと、知世は回数券を差し込んで自分が乗る方面のプラットホームに急いでいた。すると…。
「おい。」
聞き覚えのある男性の声である。彼女はそのまま振り向いたのである誰ですかと言う感じにである。
「俺だよ。知世」
さっきまでインフォメーションセンターの前にいた小狼だ。
「ああ小狼。どうしたの彼女でも待っていたんじゃなくって」
知世はそう答えた。
「彼女だったらあそこにいるよ。さっきまでMM21でデートしていたんだけれども、
苺鈴がトイレにいっていてね…。」
って座席で居眠りをしているストレートロングの髪の女性の方向を指した。
「ねぇ。小狼さくらがお見合いしたの知っている?」
知世は意地悪そうに男友達に聞いた。
「いや。俺はあいつとは別れたし、大学に入ってからはすれ違いだったしね。俺とさくらとの結婚を快く思っていない人間のだっていたんだから…。」
彼自身その人の事は誰だかは暗黙の了解で分かっているのである。
「とーやさんの事?あの人は美幸さんの尻に敷かれているから昔の様には無礼な事は出来ないし安心じゃないかしら。安心してお付き合いできるんじゃって思っていたんだけれど…。」
小狼は、
「俺だって、さくらは好きだったけれども、人間いつかは別れなくてはいけないと思っているんだ。俺も長い間倦怠期になっていたから…。俺も苺鈴と付き合い始めてうまくいっているんで、このまま彼女と結婚しようかなって思っているんだよね。」
と寝ている恋人の事を見ながら話した。
「私も、中学に進学する頃からあの人とは終わりにしようと思ったの。いつまでも報われない愛情を注いでも不幸になるんじゃないかなって。横浜に引っ越してきた時にそれを実感したんだな。馬鹿馬鹿しいじゃん自分が不幸になるなんて。
それだったら自分がしあわせになる事を考えようと思ったんだ。中学以降にであった人に影響されてね。」
知世の顔はいつになく晴れやかだった。最近の知世は自分の自慢話をしている時が
実に楽しそうである。大好きな先生の事や彼の事など。
小狼は知世のそういう顔にある種のカタルシスを感じていたのである。
「お前、それの方がいいよ…・。」
小狼は聞こえない様にいった。
電車はまたたくまにある場所に着いた。
「z驛、z驛。」
知世は、思い出したように、
「あ、もう降りなきゃ…。」
といってドアが開くなり電車から降りて行った。
小狼は黙って手をふって迎えた。
「それじゃあな…・。」
その時、うとうとしていた苺鈴が起きた。
「誰と話していたの。」
彼女は眠い目をこすりながら小狼に聞いた。
「うん。小学校時代の友達とだよ。」
彼は苺鈴にそう弁解した。
「うん。そうだったんだ…・。」
彼女はそういうだけであった。もし女性だとばれていたらどうなっていたかは甚だ疑問であるのであるが…。
「この電車湘南台に行くんだよな…。」
小狼はそういった。
「ええ。そうよ…。」
苺鈴はそう頷いた。
小狼は回想モードに入っていた。
思い起こせばいつ頃だったかな…。そう遠くない昔の頃の話である。俺が17,知世も17だった時代の事だ。秋頃だったかな。俺はさくらと同じクラスで、郊外学習で横浜美術館に来ていたんだっけな…。多分時間帯は夕方だっけな…。もうさくらのヒステリーを聞きたくなくて、俺は彼女とは離れたところにいたんだ。その時、ショートボブで、緑のセーラー服の女子学生と鉢合わせたんだ…・。なんだか急いでいるようだったな。
「おい。」
いつものように俺は、その女性に話しかけた…。
「なあに。」
面倒くさそうに女性は俺に声をかけた。どうやら急いでるところを話し掛けられたのと、
知っている人のようだったと思っていたからである。
「あら、小狼じゃないの。さくらとはどうなの。で、なんでせいじょう高校の人間が横浜にいるのよ。」
その人は知世だった。
「俺達のクラスは、横浜美術館に校外学習に来ていたんだ…。」
と俺は答えた。
「私は、今、バイトの面接をしにきたの。まあ、時間は取れないんだけれども、
少しはお話が出来るわ。」
知世は笑いながら答えた。
俺は、黙って頷いた。
「俺は最近さくらとはうまく行っていないんだ。俺は小学校時代の恋愛が今も続くとは思っていないし、御互いうまく行っていないのは分かっているんだ。」
知世は残念がる様子も無く、
「さくらとは別れるんだ。それの方がいいんじゃないの。私も彼女とは全然関係が無いしね。」
さらりと言ってのけたのである。今ここにいるのもバイトの面接に来たからである。お金持ちから落ちぶれたというよりは、自分の事を優先する印象を俺は受けたのである。
多分、あいつは大道寺家よりは平賀家の方が上手くやってのけているような気がする。
さくらの住んでいる友枝町から引っ越して、横浜にいるのも正解かなって思った物である。
「あ。」
知世は時計を見た。
「バイトの面接の時間だから…・。」
とビルが立て込んでいる方向に去って行った。
「はい。回想終了」
苺鈴が手を叩いた。
「今考えていたんだけれども、その今さっきの友人って女性じゃないの。まあ、うわきというよりは私の予想だけれども、まあ、尻に敷かれている感じがする人だったりして…。」
彼女は無邪気そうに小狼の顔を見た。
「まあ、そうだけれどもね。」
小狼はそう言った。
「今から行くのは私の友達の家だからね。」
苺鈴は長く細い髪をなでながらそう言った。
「今度、香港のあんたの母上のところに行こうか。」
小狼が車窓を眺めながらそう言った。
「うん。いいよ。高雄の毋はまったく持ってokと言っていたからね。」
苺鈴はそう答えた。
「お前の母上も満足しているし、俺の母上もまあ大丈夫だろう。しかし、一番上の姉上の了承を取らなければいけんな。」
小狼は苺鈴の方向を見た。
「あんたのお姉さんて何処にいるの。」
「イギリスのオックスフォードだっけな。男性と一緒に住んでいるよ。」
小狼がうんざりするように答えた。
「まあ、その人に言わなくてもいいんじゃないの。」
苺鈴がそう答えた。
二人を乗せた電車は郊外の大きな駅を通り過ぎ、そのまま終点までたどり着いたのである。
「そういえば、この驛から歩いて数分のところに友達がいるんだっけ?」
小狼がそう答えた。
「うん。ウィークリーマンションに私の日本の姉代わりの人がいるのよ。」
苺鈴が答えた。
この後どうなったかは皆知らないのである。
私が予測するに多分楽しくやったと思うのであるし、苺鈴の姉代わりの人の顔を見て小狼は目を剥いて吃驚する可能性があると思うからである。
この世界では有名人として知られる人間と言う事である。
まだ、それを知らない小狼は楽しそうである。
「今日のデート楽しかったね。特にワールドポーターズのハーブティー売り場が気に入っちゃったな。」
小狼は自慢して、
「俺がここはいいと昔来訪した時に思ったんだ。今もあるとは思わなかったな。」
といった。
「わーっ。あそこのハーブは臺灣にも無いのよ。いいところね」
苺鈴は無邪気に嬉しがったのである。
話しているうちに駅に着いていたので改札口をでて、二人で話し込んでいた。
地下の駅を出ると、街灯が光る茸のような形をして、点在していたのである。
二人はそのままウィークリーマンションまで急いでいた。
そのまま二人の仲を祝福するようであった。
つづく