いまさら説明する必要もない気がしますが、まずは移動体通信における人口カバー率の定義について。「人口カバー率」について総務省では次のように定義しています。
カバーされている市区町村の人口の合計÷国内総人口
これだけだとあいまいですが、その市区町村がカバーされているかどうかというのは当該自治体の役場(市役所・区役所・町村役場)付近で利用可能かどうかで判断することになっています。
先述の通り、人口カバー率というのはあくまで役場がカバーされているというだけで、極端な例としては、役場の前に1つだけ基地局を設置すれば「カバーした」とみなされることになります。実際にエリア展開の初期の頃には、このような明らかに人口カバー率を稼ぐためと思われるようなエリア化の例も散見されるようです。
1.7GHz帯(イー・モバイル)、2GHz帯TDD(現在該当なし)、2.5GHz帯TDD(ウィルコムのXGP、UQコミュニケーションズ)の新規参入事業者に対しては先の定義とは異なる基準による努力目標が別途定められています。この努力目標の基準でも「カバーされている市区町村の人口の合計÷国内総人口」という計算方法自体は同じなのですが、カバーしたと見なす基準が従来の市町村役場だけでなく、支所および出張所のすべてで利用可能でなければならないとされており、従来より厳しくなっています。
通常、支所や出張所は役場から離れている居住地域に設置されますから、この新基準は比較的簡易な方法で先述の人口カバー率の欠点が緩和できるのではないかと思います。
よくエリア展開の段階を示すときに政令市や都道府県庁所在地、○万人以上の市町村といった基準が設定されますが、何万人以上の市町村をカバーするとどれくらいの人口カバー率になるのか、というのを試算してみました。市町村の人口は都道府県市区町村のランキングデータ→市区町村の人口を元にしています。また東京23区には人口10万人未満の区が5区、その中に5万人未満の区が1区ありますが、これらの区は日中と夜間の人口の差が大きいと考えられることから、すべて20万人以上と見なして処理しています。
カバー率 | 市区町村数 | |
---|---|---|
20万人以上 | 51.96% | 134 |
10万人〃 | 68.52% | 287 |
7万人〃 | 75.92% | 401 |
5万人〃 | 83.24% | 559 |
4万人〃 | 86.91% | 664 |
3万人〃 | 91.08% | 818 |
2万人〃 | 94.43% | 992 |
1.5万人〃 | 96.41% | 1,138 |
1万人〃 | 97.99% | 1,303 |
7,000人〃 | 98.90% | 1,439 |
4,000人〃 | 99.67% | 1,618 |
2,000人〃 | 99.93% | 1,726 |
全市区町村 | 100.0% | 1,799 |
いかがでしょう。最近イー・モバイルが人口カバー率が90%を超えたことをPRしているようですが、市町村数で考えると818/1799=45.5%となり、90%というのはまだ折り返し地点にも達していないということになりますね。また0を90%にするのと、90%を99%にするのは同じくらい大変、とも言えそうです。
ほかのキャリアの人口カバー率についても見てみると、NTTドコモは100%、auは99.9%、ソフトバンクモバイルは2006年9月末で99.97%、ウィルコムは99.4%となっています。これから考えると、ウィルコムは人口5,000人前後、auとソフトバンクモバイルは2,000人前後が目安となりそうです。そして全市町村に基地局を建ててしまったドコモには執念を感じます。
Last modified: Sun, 17 May 2009.
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